「日本の種、大丈夫?」SNSで話題の種子法・種苗法、結局何が起きたのか整理してみた

種子法は「廃止」種苗法は「改正」

「種子法が改正されて、農家が自分で種を採れなくなった」という話を耳にしたことはないでしょうか。

実はこれは、正確には「種子法」ではなく「種苗法」という別の法律の話です。

名前がよく似た2つの法律が、ニュースやSNSの中でしばしば混同されて語られています。

この記事では、種子法と種苗法それぞれが何を目的とした法律なのか、そして両者がどう違うのかを整理します。

この後の記事で「改正・廃止のメリットとされる点」「デメリットとされる懸念点」を順に取り上げていく予定です。

種子法とは何だったのか?2018年に廃止された経緯

主要農作物種子法の歩み

種子法(正式名称:主要農作物種子法)は、米・麦・大豆といった主要農作物の種子(原原種・原種)について、国と都道府県が責任を持って生産・普及させることを義務づけていた法律です。

都道府県の農業試験場などが中心となり、地域に適した優良品種の開発・審査・安定供給を公共の役割として担う仕組みを支えていたとされています。

この種子法は2018年に廃止されました。

廃止の背景には、公共主体による種子供給を維持したまま民間企業の品種開発への参入を促し、競争を通じた新品種開発のスピードアップを図る狙いがあったとされています。

廃止後は、都道府県が独自に「種子条例」を制定し、公共育種の実質的な機能を維持しつつ民間参入も進めるという、いわば「ハイブリッド」の形が広がっているとされています。

種子法が対象としていた作物

種子法が対象としていたのは、あくまで米・麦・大豆など「主要農作物」に限られていました。

野菜の多くはすでに種子法の対象外で、民間企業が開発したF1品種(一代雑種)の種子が主流になっていたとされています。

つまり「稲の種子をどうするか」という議論と「野菜の種子をどうするか」という議論は、そもそも前提が異なります。

種苗法とは何か?自家増殖を原則禁止した2020年改正

種苗法改正(自家増殖ルール)

一方の種苗法は、種子法とは別に存在する法律で、新しく開発された品種(登録品種)を開発者の知的財産として保護する仕組みを定めています。

2020年12月に成立した改正によって、それまで農家に広く認められていた「自家増殖」――収穫した種や苗を次の作付けのために自分でまた使うこと――が、登録品種については原則として禁止され、品種を開発した育成者の許諾(多くの場合、有償のライセンス契約)が必要になりました。

ただし施行は段階的で、登録品種の海外持ち出し制限・栽培地域の指定・表示義務化は2021年4月1日、自家増殖の許諾制化そのものは2022年4月1日から実施されています。

この改正の主な狙いとして語られるのが、シャインマスカットに代表されるような、日本で開発された品種が海外へ無断で持ち出され、現地で栽培・第三国へ再輸出されてしまう事例への対応です。

登録品種の海外持ち出しや無断増殖に一定の歯止めをかけることを意図した改正だとされています。

「登録品種」と「一般品種」は別物

種苗法改正で自家増殖が制限されるのは、あくまで「登録品種」に限られ、在来種や登録期間が切れた「一般品種」は対象外とされています。

この線引きの詳細(対象品目の範囲や登録品種の具体的な数など)は一次資料での確認が必要な部分ですが、「すべての種・苗の自家採種が一律に禁止された」という理解は不正確である点には注意が必要です。

種子法と種苗法、何が違う?対比表で整理

種子法と種苗法、何が違う?
正式名称主要農作物種子法種苗法
法的な出来事2018年に**廃止**2020年に**改正**(自家増殖の許諾制化は2022年4月施行)
扱う対象米・麦・大豆等、主要農作物の種子の供給体制登録品種(作物全般)の育成者権・自家増殖の可否
主な論点種子供給を「公共」が担うか「民間」に委ねるか登録品種の自家増殖をどこまで制限すべきか
対象範囲主要農作物(米・麦・大豆等)のみ登録品種全般(一般品種・在来種は対象外)

よくある質問

種子法と種苗法は同じ法律ですか?

いいえ、別の法律です。種子法(主要農作物種子法)は2018年に廃止された、主要農作物の種子供給体制に関する法律です。種苗法は登録品種の育成者権・自家増殖の可否を定めた別の法律で、2020年に改正されました。名前が似ているため混同されやすい点に注意が必要です。

種苗法改正で農家は種を採れなくなったのですか?

一律に禁止されたわけではありません。自家増殖の許諾が必要になるのは「登録品種」に限られ、在来種や登録期間の切れた「一般品種」は対象外です。また農林水産省は、販売・譲渡を伴わない家庭菜園などの自家消費目的の利用については、登録品種であっても今回の改正の影響を受けないと明言しています。ただし対象品目の範囲や許諾料の相場など運用の詳細は一次資料での確認が必要です。

種子法はなぜ廃止されたのですか?

A. 公共主体による種子供給を維持しつつ、民間企業の品種開発への参入を促す狙いがあったとされています。廃止後は都道府県が独自の種子条例を制定し、公共育種を維持する動きが広がっています。

種苗法改正の目的は何ですか?

日本で開発された品種が海外へ無断で持ち出される事例への対応として、登録品種の育成者権を保護し、無断増殖・海外流出に歯止めをかける狙いがあるとされています。

まとめ

種子法(廃止・2018年)と種苗法(改正・2020年)は、名前は似ていますが目的も出来事も異なる別の法律です。

種子法は「種子供給の担い手を公共と民間のどちらにすべきか」という論点、種苗法は「登録品種の自家増殖をどこまで制限すべきか」という論点を扱っています。

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